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7月13日、自由劇場で上演していた『思い出を売る男』が千秋楽を迎えました。
この日の東京は本格的な夏の訪れを思わせる厳しい暑さに見舞われ、劇場に訪れる人びとのなかには帽子に、日傘、そしてハンカチを手にして歩く姿も見られました。梅雨そのものだった先月21日の公演初日からはすっかり様変わりしていました。

猛暑となったこの日、劇場に来るだけで汗いっぱいに
気温30度を越す暑さ、そして容赦なく照りつける日ざしとは対照的に、劇場には幻想的な雰囲気が漂います。
作品の舞台は、戦後まもない頃の日本、東京の裏街――
灰色の壁、ほの暗い街灯の光、不思議な静けさを持った場所が男の探し求め、選んだ場所。そこで「思い出」を売っていました。男が奏でる音楽に誘われて様々なひとがやってきます。思い出を持たない花売娘、したたかな広告屋、重い影をひきずる街の女。
「音楽で過ぎ去った遠い思い出を呼びさまして行くんだ
悲しい心の中に思い出の詩をめざますのが、僕の商売さ・・・」
男の吹くサクソフォンの音色、手まわしオルゴールの優しい旋律など、劇は常に音楽で満ちています。そうした音楽を耳にし、この幻想的な詩劇を体感した観客の心にはどのような「思い出」がよみがえってきたのでしょうか。

劇の世界をそのまま引き継いだ形のカーテンコール
物語の幕が静かに下りると、出演者全員が舞台に登場し、作品のテーマ曲を語りかけるように歌いました。歌が終わるとともに、あたたかい拍手が客席からおこります。途切れることのない大きな拍手に、出演陣は何度も舞台に登場し応えました。思い出を呼びさます優しい音楽は、客席からの拍手というあたたかい声に変わり、いつまでも劇場に響き渡りました。

惜しみない拍手に手を振って応える俳優たち
『思い出を売る男』は7月14日に創立55周年を迎えた劇団には大きな意味を持つ作品です。
それは幕開けの日下武史の挨拶にもあらわれていました。
「私ども劇団四季が結成されたましたのは1953年7月のことでした。
結成に踏み切ったのは、私や浅利慶太の恩師である加藤道夫先生の影響によるところが大きく、
またこの劇団四季という名前の名付け親さんになってくだすったのも、加藤さんの親友で
私どもの尊敬する先輩、芥川比呂志さんだったのです。
私どもは加藤さんに導かれて演劇の道を歩み始めました。
加藤さんはこの作品で、詩と音楽の結合をイメージされたと言います。
そして私ども劇団四季がこの三十数年大きな仕事のひとつとして展開してきたミュージカルの
原点がここに繋がっているように思うのです。
加藤さんが果たそうとして果たせなかった演劇的課題を引き継いで、
私たちは時間をかけながら仕事を続けています」
この後、自由劇場では21日よりゾウと人間の心のふれ合いを描いた『むかしむかしゾウがきた』、9月からは23年ぶりの上演となるジロドゥの作品『トロイ戦争は起こらないだろう』と続きます。約500席の劇場空間で劇団四季の演劇の歩みを体感してください。


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