

娘であるソフィ役から、今回は母親であるドナ役と、樋口さんと本作の間には浅からぬ縁がありますね。樋口さんにとって『マンマ・ミーア!』とは?
- 樋口
- ひとことで表現するなら“我が家のような舞台”です。自分が立っている舞台ももちろん、映画も好きだし、ラスベガスなど海外に行くときは必ず現地の『マンマ・ミーア!』を観るようにしています。海外作品で初めてオリジナルキャストを演じさせて頂いた作品でもありますし、すごくアットホームな、“帰ってくるとほっとする場所”ですね。
そして今回、初めてドナ役を演じることなりました。
- 樋口
- 「いつか挑戦したい!」と思っていた役です。けれど、同時に「自分に演じられるのかな?」という不安もありました。だって、ずっとソフィとして間近で先輩方のドナを見てきて、その強さや奥深さを板の上でひしひしと感じてきましたから。役者って、実は舞台では客席から見えるものの100倍くらい表現しているんです。だから、喜びと同時にプレッシャーもとても大きかった。
実際に演じてみて、どうですか?
- 樋口
- 同じ作品であっても、演じる役が違えばこうも印象が変わるものか、と。ソフィのときは、ドナに対してサプライズを仕掛ける楽しい面がありました。けれど、ドナは常に苦悩しています。ソフィの結婚のこと、サムとの過去、ホテルの経営など悩みばかりで、心から自分が楽しめる、気持ちがほどける瞬間が最後の最後までないのです。かといって、重々しく沈痛に演じたのでは台無しになってしまう。ですから、その心を解き放つ微妙なさじ加減。それが、ソフィとは違う大人の女性を演じる難しさではないでしょうか。
ドナは樋口さんの年齢よりもかなり年上の設定ですよね。
- 樋口
- 恋多き女性、しかも女手ひとつで娘を育て上げた女性です。これまでの人生も傷だらけで、彼女の身にはあまりにも多くのことが起こってしまった。それでも困難に押し潰されず、立ち向かって乗り越える強さを持っていますよね。そして、その強さの根底にはソフィに対する大きな泉のような無償の愛情がある。
私は幸い、これまでもアイーダやリナ(『南十字星』)など強い女性を演じる機会に恵まれてきたのですが、彼女たちを通じて感じたのは「人間の強さは、自分ではなく愛する人、愛する国があって初めて生まれるもの」だということです。
『マンマ・ミーア!』は、今まで演じてきたミュージカルよりもキャラクター設定の幅が広く、その人なりのソフィ、その人なりのドナを演じることができます。確かに私はドナよりも年下ですが、これまで演じてきたヒロインや、ソフィの目から見てきたドナのイメージを活かして、自分だけのドナを作るんだと前向きに捉えていますよ。
強さという点では、樋口さんも高校生のときに四季に挑戦するなど強さを秘めているように感じます。
- 樋口
- 私も女手ひとつで育ててもらったので、ドナ・ソフィ親子に共感できる部分はあります。でも私の場合、母が私の気持ちを尊重して自由にしてくれたので、だからこそ自立心が芽生えたのだと思います。それに比べて、色々な困難や苦難を引き受けて強く生きているドナは、すごくカッコいい、憧れの女性です。
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Photo by 下坂敦俊
