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ミュージカル『ウィキッド』の舞台は「オズ」の国、まばゆく輝く非日常空間です。この独特の世界を形作る舞台装置は、緞帳の向こう側だけではなく客席に向かって大きくせり出しています。観客は劇場に入った瞬間から自分が現実世界とはまったく別の世界に入り込んだことを知るのです。舞台最上部には、恐ろしい口と巨大な翼を持つドラゴンがにらみをきかせています。小型飛行機もの大きさのドラゴンはよく見ると歯車や車輪、ロープによって操られる機械仕掛け。ドラゴンの下、緞帳には「エメラルドの都」が燦然と光り輝くオズの国の地図が描かれ、取り囲むように、ツタや歯車が配されています。

『ウィキッド』の世界を再現したのは、セットデザイナーのユージーン・リー。グレゴリー・マグワイアの小説「オズの魔女記」で描かれたイメージを基に、リー独自のアイデアを組み合わせて、特色ある『ウィキッド』の世界を作り出しました。
独特で、スケール感があるだけではなく、リーはシンプルに空間を使うことにより、とぎれさせることなく場面転換をつなぐことに成功しました。この装置デザインは2004年のトニー賞の装置デザイン部門で最優秀賞を獲得しています。
プロセニアムアーチ(舞台を取り囲む額縁)の上部にはドラゴン時計、その周りをロープ、滑車、大きな歯車が取り囲んでいます。緞帳は『ウィキッド』の主な場面がその中に含まれている壮大な地図。「シズ大学」「エメラルドの都」、さらには「あばれものの木の森」などといった小説「オズの魔法使い」シリーズに登場する地名も書かれているのです。
装置同様にトニー賞の最優秀衣裳デザインを獲得しているのが、スーザン・ヒルファーティの魅惑的な衣裳。
ヒルファーティは作品に登場する様々なキャラクターの衣裳を作るために、現代のファッション・デザインから古典的なファッションまでを広範に研究しました。その衣裳デザインは、視覚的な効果はもちろん、この作品のテーマともいえる“善と悪との葛藤”“抑圧からの開放”などを描く、非常に重要なアイテムとなっています。

例えば、動物と人間が共存していた「オズの国」から、次第に動物たちの権利が奪われていくことを表現するために、物語が進むに従って衣裳に動物の皮や羽毛などが使われるようになります。
舞台装置、衣裳に魔法をかけ、『ウィキッド』的世界の雰囲気を効果的に高める役割を果たしたのが、ケネス・ポズナーによる照明デザインです。
『ウィキッド』にはなんと800個もの照明装置が使用され、劇中の50余りものシーンごとに違ったムードを作り出しています。

その中でも特徴的なのは、全てのものが緑色に統一された“エメラルドの都”−。風景の緑と民衆の衣裳の緑、それぞれの緑がバランスを保ちつつも、緑色の肌を持つ主人公エルファバが都を移動する場面を浮き立たせる巧妙な色彩感覚は、観客の目を舞台に釘付けにします。