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舞台装置家 土屋茂昭
1968年の民芸と提携した日生劇場での初演、それに1977年の劇団四季での初演での日生劇場での金森さんの舞台装置は、間口が5間(約9.1m)、奥行きが9間(約16.38m)の大きな長方形で、ビニールマットに白い床1枚というシンプルな舞台でした。
それが1997年、グローブ座というシェイクスピアの時代の名前の劇場で上演することになった時に、今回の公演ではもう少し時代性を出そうということになり、衣裳とあわせて舞台装置もリニューアルすることになりました。
金森さんは既に鬼籍の人で、僕が担当することになったのですが、金森さんのシンプルさを残しつつ、いわゆる“ヴェニス的”なイメージをもう少し強調するように考えてみました。

具体的には板1枚に場面転換は幕2枚だけ、という基本的な構造は変えていませんが、グローブ座は、日生劇場に比べるとぐっと小さな劇場なので、間口を4間(約7.28m)、奥行きを7間(約12.74m)という形に変え、小道具も極力少なくしています。
ただ、ちょうど前年、ザルツブルクのエレクトラの公演の帰りに、ヴェニスに立ち寄ることができたので、その時の印象を生かしています。
ヴェニスは、運河とそれに懸かる橋で形成された町ですので、それを表現するために、メインのアクティングエリアは、周囲の道具から遮断し、袖や舞台奥とは橋や階段だけで繋がるようにしました。
さらに両サイドの橋の下には、ちゃんと細い路地が作ってあります。
そこが運河になるわけです。
本当はそこに水を流したいくらいです。
床面は、ヴェニスらしく石畳の模様を入れましたが、これらの橋によってしか周囲と繋がっていないので、壁面はありません。
アクティングエリアは、ヴェニスの玄関口であるサン・マルコ広場をイメージしているので、壁がない状態はその点でも広場らしくなっていると思います。
舞台奥の絵ですが、これはイギリスの画家、ウィリアム・ターナーの絵を使用しています。
ちょうどイギリスで購入した画集を持っていたので、その中の1枚で、ターナーはヴェニスを題材に多くの絵を描いています。
シェイクスピアもイギリス人でヴェニスを書いていますし、ターナーもイギリス人でヴェニスを描いています。
特段洒落たつもりではないのですが、この霞んだヴェニスの絵というのは、“水の都”ヴェニスの湿潤な雰囲気をよく表現していて、この物語ともマッチングしているのではないかと、この絵を選びました。