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この生命誰のもの
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ご観劇の手がかり
 人間だれしも、いつでも、ケガをしたり病気になる可能性があります。『この生命誰のもの』の主人公・早田健も、彫刻家として送っていた健全な暮らしから一転、首から下は自らの意思で動かすことの出来ない体となってしまいました。そして彼は、自らの生の意味を深く自身に問い、その結果として「尊厳ある死」を望むこととなるのです。近年の世界的な医療技術・医学の進歩によって、延命技術も進歩していますが、逆にこの作品で描かれるような様々な問題も一方では増えているのが現状です。
 このページでは、作品中に登場する用語や、現代日本における尊厳死をめぐる様々な問題について、ごく一部、また簡易ではありますがご説明しておりますので、参考にしていただければ幸いです。
尊厳死
 自らの体を動かすことができなくなった早田健は、「あらん限りの尊厳を持ちながら死ぬこと」を決断する。“尊厳ある死(Death with Dignity)とは、患者が「不治かつ末期」になったとき、自分の意思で延命治療をやめてもらい安らかに、人間らしい死をとげること”と日本尊厳死協会は定義している。病院で延命治療によって「生かされる」ことは可能だが、それが彼にとって真の意味で「生きる」ことではないと早田は考えるのだ。日本尊厳死協会は、患者の自己決定権に基いた尊厳死が法律で尊重されるよう立法化運動を進めている。また現在、日本の各地でリビング・ウィルの登録と保管を推進する民間団体の活動が活発に行なわれている。
QOLとは?
 クオリティ・オブ・ライフ(Quality of Life)の略。文字通り、生命の価値=人生の質を意味する。結果的に「尊厳死」を望むこととなった早田健だが、彼は真の意味で「生きたい」と願っているからこそ、この決断を下す。回復の見込みはなく、医療によって「生かされ続ける」ことは、自らのQOLに反すると結論付けた彼は、弁護士を雇い、「死」を意味することとなる「退院」を病院側に許可させる行為にでるのだ。
日本尊厳死協会
 自分の傷病が今の医学では治る見込みがなく、死が迫ってきたときに、自ら「死のありかたを選ぶ権利」を持ち、そしてその権利を社会に認めてもらおうという目的をもって1976年に設立された。尊厳死運動を人権確立の運動と定義し、リビング・ウィルを発行、登録・保管活動を行なっている。 日本尊厳死協会のウェブサイトはこちら>>
リビング・ウィル(Living Will)
 元気なうちに、終末期での医療について自分の希望・意思を表した書面。「生前の遺言書」とも言われる。近年では、上記尊厳死協会のほかにもこのリビング・ウィルを作成・保管する団体が増えてきている。
人身保護請求
 退院を希望する早田に対し、病院側は彼の精神状態が正常でないと主張し、混乱状態の患者の望む「死」の希望は許されるべきものではないと反論する。早田側は彼の精神状態が正常であることを立証すべく、また自由意志に基いて入院している患者をその意思に反して病院に留め置くことは人身保護法に違反していると審問で主張することとなる。
延命措置の中止と非公開の審問
『この生命誰のもの』では、動くことの出来ない早田の病室で、「延命措置の中止を許すか否か」をめぐり証人尋問が行なわれることとなる。日本の裁判制度にも、「出張尋問」という方法による、病室において非公開の尋問を行なう手続があるので、当作品の中では演出に支障がない限りその制度に準じている。しかし、この作品における「延命措置の中止の許否」の判断を裁判所に求める手続は、現在の日本には存在しない。この点は、当時の英国法に基く原作に準じたものである。
精神衛生法
 昭和25年に制定された。その後精神保健法となり(昭和62年)、現在は精神保健及び精神障害者福祉に関する法律と改題されている。現法は精神障害者の医療及び保護、そして社会復帰への援助と福祉を目的とするものである。本作内では、早田が健全な精神状態にないとする病院側が、彼をしかるべき治療を必要とする者として病院に留め置こうとするために用いられる。
患者の自己決定権
 現代医療の発展とともに、以前に比べて「死」は徐々にゆっくりとやってくるものに変化してきている。死へのプロセスの変化において、その時間に対する対処方法も患者には選ぶ権利がある、と考えられている。自己決定の権利は、高齢化社会となった現代において、さらに重要視されるべき問題である。アメリカでは1973年、米国病院協会による「患者の権利章典」、1990年の「自己決定権法」で承認されている。この作品で、早田健はまさにこの自己決定の権利を主張するのである。
インフォームド・コンセント(Informed Consent)
 その名のとおり、「説明された後の同意」のこと。近年の医療・治療上において、患者の権利として重要視されている。つまり、患者には医師側からの説明を十分に受けた上で、治療方針などについて同意をする権利があるということである。
医療ソーシャルワーカー
 現在の医療をめぐる環境は、日々進歩している。その中で、患者やその家族の抱える様々な問題の解決を目指し、社会福祉の立場から専門的に援助・助言を行なうのが医療ソーシャルワーカー。病院、保健所や老人福祉施設など各種保険医療施設で活動している。その必要性は年々高まり、またその数も増加の一途を辿っている。
PHOTO BY 荒井 健
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