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ある総合病院の一室。彫刻家の早田健は、半年前の交通事故で脊髄を損傷して以来、首から下が麻痺し、ベッドに寝たきりの状態となっている。指一本動かすことができず、残された能力は話すことだけ。その現実は、明晰な頭脳と鋭い感性を持つ早田にとって耐え難いものだった。
主治医の江間博士は、意識が鈍ることを嫌って薬の服用を拒む早田を無視して、強制的にトランキライザーを処方する。担当医の北原は、江間の立場に同調しながらも「人間には自分の意思で行動を決定する権利がある」と主張する早田の言葉に考え込む。
一方、早田は自分の意思に反して治療を続けられることに苛立ちを募らせる。機械のように生かされ続けることより、人間らしく“死ぬ権利”を主張し、北原を困惑させるのだった。
病室に呼ばれた弁護士の森山は、早田に「死ぬために退院したい」と告げられる。「静かに死ぬこと、それもあらん限りの尊厳を保ちながら死ぬこと」を自ら決断した早田に頼まれた森山は、江間に会うが、事故の後遺症で抑鬱状態にある患者に、自分の生死について理性的な判断は下せないと反論される。江間は早田の精神状態が健全でないことを理由に、精神衛生法に訴えて、早田を病院に拘束しようとしていた。これに対抗するべく、森山は人身保護請求を申請するよう早田に勧める。
こうして、“死ぬ権利”を巡って仮の法廷となった早田の病室を舞台に、異例の裁判が開かれることになった 。
※ この作品は、昭和54年12月、ブライアン・クラークの原作を翻訳して初演された後、昭和62年6月には、日本に舞台を置き換えた潤色という形で再演されました。
その際拠り所となった精神衛生法(昭和25年制定、昭和40年改定)は、再演直後の昭和62年7月に改正され、精神保健法となりました。しかし、今回は原作の劇的効果を尊重して、改訂前のシチュエーションを変えずに上演いたします。ご了承ください。 |
| PHOTO BY 上原タカシ |
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